きっかけとなったのは、NHK出版が昨年11月に発売した「フリー <無料>からお金を生み出す新戦略」(クリス・アンダーソン著、1890円)。発売前に1万人限定で全文を公開するキャンペーン始めたところ、43時間で閲覧が1万人に達した。同書の内容はまさに無料サービスのビジネス活用であり、米国でも同様の販売促進活動が行われたという。
その後、インプレスジャパンも「できるポケット+ クラウドコンピューティング」(小林祐一郎&できるシリーズ編集部著、819円)を、2月前半の1週間限定で無料公開した。
現在は、角川書店が3月10日発売の「クラウド時代と<クール革命>」(角川歴彦著、片方善治監修、740円)が、10日午前11時まで無料公開中。角川グループホールディングス会長でもある著者が、初の出版となる作品の丸ごと無料公開を決め、角川書店あげての販売キャンペーンが展開されている。
老舗の出版社ではほかに、文藝春秋も昨年10月発売の「生命保険のカラクリ」(岩瀬大輔著、819円)を、著者の強い意向で4月15日まで無料で公開している。
雑誌や書籍の販売は、インターネットの普及に押されて苦境に立たされているが、出版業界では「一度も目に触れず買ってもらえないより、読みたいだけ読んでもらった方がヒットするチャンスがある」(営業担当者)との考えがある。実際、「クラウド時代と<クール革命>」は、ミニブログサービス「twitter(ツイッター)」などで評判が広まったおかげで書店からの引き合いが増加。すでに重版も検討されているという。
これまでに無料公開された書籍は、いずれもネット・ビジネスに密接に関連した内容のため、ウエブの読者になじみやすい特性を生かした取り組みといえる。一方で「作品に確固とした価値がなければ、無料公開してもタダ読みされるだけで買ってもらえない」(編集者)との指摘もある。
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